新卒日本語教師の苦労シリーズ②学生対応(叱り方、注意の仕方)

学生をどう指導したらいいのか、どう注意したら聞いてくれるのかがわからない
学生にあまり信頼されていない気がする…

そのように悩んでいる方に向けて、
学生対応が苦手で一部の学生から嫌われていた私が、学生に信頼されるようになった叱り方、注意の仕方をお伝えします!

(私が嫌われたダメな例を含めてお伝えします。)

一部の学生に嫌われていた時代

日本語教師1年目のとき、私は学生対応(叱り方、注意の仕方)が本当に下手でした。

・学校のルールを守らせないと!
・強く言わないと なめられてしまう!
・先生っぽくしないと!

こんなことばかり考えていて、学生の気持ちも考えないといけないことはわかっていましたが、あまり考えられていなかったと今では思います。上記の考えを元に注意した結果、

・クラスの雰囲気が悪くなり、国同士でバカにしあう、母国語で悪口を言う
(クラス替えをした後も影響が出ました)
・何度注意しても、学生に響かない
・「あの先生は国ごとで えこひいき をしている」と言われる

このような影響が出ました。最悪ですよね。(ちなみに全て担任クラスの話です)

日々の授業を消化するだけでも精一杯だったのに、おまけに学生との関係も最悪でどうしたらいいのかわからない状態でした。


考えを変え、さらに対応を変えた結果、今では前述した学生とは別の学生からですが

・「厳しいけど熱心な先生だと思います」
・「先生の授業のときは眠くありません!」
・「先生が笑うと教室の雰囲気が明るくなって、みなさんが笑顔になります」
・(誕生日プレゼントを山のようにもらう。アイシャドウ、花、写真立て、ゴ〇バのチョコレートなど)

こんなことをいろんな学生に言われること(されること)が増えました。そして、クラスの雰囲気も段違いによくなり、注意すると聞いてくれるようになりました。

もちろん学生が違うので、クラスの雰囲気が異なってくるのは当然のことなのですが、1年目の頃から何も対応を変えていなかったら今でも「あの先生嫌だな」と思われていたと思います。

そこで、今回は私が気を付けたことを失敗例を交えながら紹介していきます。

こんなときどうしたらいい?

  1. 学生が宿題を忘れてしまった
  2. 授業中眠そうにしている&集中していない
  3. 母国語でのおしゃべりが多い

1.学生が宿題を忘れてしまった

以前の私であれば
「宿題を忘れてはいけません、いつ持ってきますか?絶対に持って来てくださいね」
と、こちらの意見を一方的に言って学生の意見を聞いていませんでした。

これは非常にマズイです。

学生から意見を聞かない先生のレッテルを貼られます。
みなさんも学生時代、こちらの言い分を聞かず頭ごなしにダメと言ってくる先生のことが嫌いじゃありませんでしたか?それと同じなのです。

◎こうするといい!


①理由を聞く(どうして忘れましたか?)
このとき問い詰めるように聞いてはだめです。悪いことをしたと自覚している学生は自分ですでに反省&後悔しています。
怒らず、共感して聞くことで理由を話してくれやすくなります。



②いつ持ってくるか自分で言わせる(いつ持ってきますか?)
教師が決めるのではなく、自分で考えて口に出して言うことで、学生に自覚してもらいます。



③同じことをしないためにどうするか考えさせる(今日は~が理由ですね。じゃあ、今度からどうしますか?)
ここを考えてもらわないと、また同じことを繰り返してしまい、宿題を何度も忘れてしまいます。
そのため、「今日はこういうことで忘れてしまった、それはわかりましたから次はどうしたらいいと思いますか?」と一緒に考えます。

学生が上手く言えなかったときは、誘導することもあります。

また、1度目であれば、そんなにツッコんで質問しません。

2度目、3度目も同じ理由で忘れていたら、「あれ?前もその理由だったからこうしよう、と話しましたね?それでもまた忘れましたね?じゃあ違う方法を考えましょう」ともう一度一緒に考えます。

上から叱るのではなく、あくまでも一緒に考えるというスタンスでいると、こちらの怒りも静まります。

上から叱ると学生も抵抗する気持ちが出てしまって、嫌悪感を抱いてしまいます。
一緒に考えるというスタンスで話すと、学生も「叱られたけど次は注意しよう」と前向きになってくれます。

顔を見ると一目瞭然なので、だまされたと思ってやってみてください。

授業中眠そうにしている&集中していない

以前の私であれば、
「立ってください」
「顔を洗ってきてください」
「勉強しない人はこのクラスには いりません。帰ってください」

今思うと、頭ごなしにクラス全員の前でこんなことを言われると嫌になるのがわかります。
そしてこのキツイ言葉をほとんど理由も聞かず特定の学生に授業のたびに言っていました。
(その学生だけ明らかに態度が悪かったんですけどね)


このような言葉を言っても、学生には響かないし、むしろ「この先生嫌だ」と思われて、ますますこちらの話を聞いてくれなくなります。そこで考え方を変えました。


私のファンにさせれば、眠くならずに集中するだろうし、言うことを聞くんじゃないか…?


皆さんが学生の頃のことを思い出してください。好きな先生の話だったら素直に聞いていませんでしたか?

決してアイドルみたいにしろ、というわけではありません。学生に媚を売るわけでもないのですが、

「あなたを心配しているんですよ」
「あなたのために注意しているんですよ」というオーラを出して接することで、

「この先生は気にかけてくれるな」
「話を聞こうとしてくれるな」と
学生に思ってもらえれば、こちらの話を聞いてくれるようになります。

では、具体的に何をしたのか。

①理由を聞く
まずはこれをするにつきます。休憩時間に1分でもいいので、学生のそばに行ってどうしたのか聞いてみないことには、何もわかりませんよね。

・アルバイトの時間が深夜や長時間で生活リズムが崩れている
・恋人と別れた
・家族が入院した

など、学生はいろいろな理由で集中できない&眠くなってしまっています。まずは聞いてみてください。きっと何か理由を話してくれると思います。



②雑談をする

授業中は眠そうにしている学生でも、休憩中は楽しそうにしている なんてことはありませんか?

そのときは学生の身に付けているものでも、国の話でも何でもいいのでやりとりをしてみてください。すると次の授業が始まってからも、そのテンションのまま授業を受けてくれることが多いです。



③少しでいいから頑張ると約束する

どうしても眠そう&集中できなさそうであれば、休憩中にまず理由を聞いて、そのあとちょっと頑張ったらできそうなことを約束します。

・メモがあまりできていなかった
次の時間はメモするのを頑張ろう

・下をずっと見ている
次は前を見よう、
 友達が話しているときは友達を見よう

・アルバイトで疲れている
次の時間は頑張れそう?
 例文を作るとき名前を呼ぶから頑張ろう

このような約束をすることで、学生がただ何となく座っているだけじゃなくて目標を持てるようになります。

そして、その延長で授業を聞くようになります。授業が終わった後もし約束を守れていたら
「よく頑張りましたね!」と褒めてあげましょう。
そうすることで、「先生はちゃんと見てくれていた」「頑張った私えらい!」と気持ちよく帰ることができます。

母国語でのおしゃべりが多い

特に、○○人だけのクラスだと多国籍ではないので、必然的に日本語を話す機会が減って、母国語で話してしまいがちです。

私もベトナム人だけのクラスに入ったときに、なかなかベトナム語でのおしゃべりがやまず、困ったことがあります。

お互いに教えているのであればいいのですが、明らかにそうではない話をしているのは言葉がわからなくても何となくわかりますよね。

そんなとき、以前の私がしていた対応は、

・「静かにしてください」とひたすら言う
・おしゃべりしている学生を当てる
・「何の話ですか?」とキレ気味に言う


このとき、基本的に眉間にしわが寄っていたと思います。
一時的には効くのですが、一日に何回もしていると段々慣れてしまい、あまり効かなくなります。

そこで、先輩に相談したり、学生と同じ国籍のスタッフに相談したところ以下の方法を見つけました。



レベル①学校に来ている目的を再確認させる
「どうしておしゃべりしているんですか?」「どうして学校に来ているんですか?」

学生「勉強するためです」

「おしゃべりの勉強ですか?」「何の勉強をするために来ていますか?」

学生「日本語の勉強をするためです」

「じゃあ、どうしたらいいですか?○○語でずっと話していたら日本語の勉強ができますか?」

学生「…できません」

「じゃあどうしますか?○○語を話しますか?」

学生「…静かにします。日本語を話します」


このとき、眉間にしわは寄せません(大切)。そのままおしゃべりしていていいのかな~?という雰囲気で言います。これで静かにならなかったらレベル②へ行きます。


レベル②連帯責任にする
おしゃべりすると言っても全員が全員おしゃべりをしていることは少ないのではないでしょうか?

おしゃべりをしている本人も悪いですが、おしゃべりを許す雰囲気を作っているのは周りの学生で、周りの学生が注意さえしてくれれば、こちらも無駄な労力を使わなくてもいいはずです。

そこで、授業が始まってすぐ、こう宣言します。

「おしゃべりしていたら、私は授業をしません。全部ストップします。」

少しでもおしゃべりをしていたら、その都度授業を中断し、静かになるまで無言で待ちます。

そうすることで学生同士で注意し合う環境を作っていきます。私が入っていたクラスではかなり効果があり、私以外の先生のときも静かにしていたと報告を受けました。

これでも静かにならなかったら最終手段のレベル③です。


レベル③おしゃべりしている本人を職員室へ行かせる
学生は学費を払っているので、授業を受ける権利があります。
しかし、授業を妨害する権利はありません。もちろん他の学生の時間を奪う権利もありません。

他の学生の授業を受ける権利を守るためにも、最後は退出してもらいます。

そして、授業後に一対一で話をします。

「どうしておしゃべりをするんですか?」

「○○さんが勉強したいとき、他の人が周りで話していたらどうですか?」


「○○さんも勉強できないし、周りの人も勉強できません。どうしますか?」

最後は、もうおしゃべりしないと約束して、クラスに掲示するために大きい紙に「おしゃべりしません」と書いてもらいます。
こうすることで、クラスメイトはもちろん、授業担当の先生もそれを利用して注意することができるようになります。


注意するときの流れ↓

①自分たちでお互いに注意し合う雰囲気を作ってあげて、気づいてもらう
②集団の力が発揮されなかったら、個人と時間をかけて向き合う


目次

まとめ

今回紹介した方法は、必ずしも正解ではありません。
学生が違えば、対応も変わってくるかと思います。しかし、対応の仕方が全くわからない、周りに相談できる人がいないという先生のために、一例として紹介しました。

これを読んだ先生のモヤモヤが、わずかでも晴れますように…。

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